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京都府向日市、長岡京市を中心に公正証書遺言、遺産分割協議書の作成支援をしております行政書士の林宏雄です。
今回のご相談は「親が亡くなってまず行うべき相続財産(遺産)の調査方法・探し方」について。
相続の手続きというのは、亡くなられた方(被相続人)の持っていた財産(遺産)を一定の人に引き継がせることを言います。そのためにはまず相続財産を調べて、何が・どこに・どれだけあるかということを把握しないことには次の段階に進むことはできません。
しかし親が亡くなり相続に直面すると、ご相談者のようにどのように手続きを進めたらよいか不安に思われる人も多くいらっしゃいます。
今回は、相続の手続きでまず最初に行う相続財産(遺産)の調査方法・探し方について財産目録の作成も見据えてご紹介したいと思います。
目次
1,相続財産(遺産)とは
相続財産(遺産)というと、目に見える自宅不動産とか現預金といったプラスの財産をイメージしますが、住宅ローンやその他の借入金などマイナスの財産も相続財産になります。
そして上記のように目に見える財産はわかりやすいですが、相続財産に含まれるか判断に困るものがあります。
以下では、相続財産に含まれるもの、含まれないものについてご紹介します。
‣相続財産に含まれるもの
先にも触れたように、相続財産に含まれるものはプラスの財産とマイナスの財産があります。
経済的価値があるものとして一般的に挙げられるものを下記にまとめますので、参考にしていただきながら、財産調査の第一歩として分類して頂ければと思います。
✅ プラスの財産(積極財産とも言います)
- 不動産・不動産上の権利・・・宅地、建物、農地、店舗、居宅、借地権、借家権など
- 現金・有価証券・・・現金、預貯金、株券、貸付金、売掛金など
- 動産・・・自動車、家財、貴金属、骨董品、宝石、美術品など
- その他・・・電話加入権、ゴルフ会員権、著作権、生命保険の権利(受取人が被相続人本人指定)、慰謝料請求権、損害賠償請求権など
✅ マイナスの財産(消極財産とも言います)
- 負債・・・住宅ローン、借金、買掛金など
- 税金関係・・・未払いの所得税と住民税、その他未払いの税金など
- その他・・・未払い分の地代・家賃、未払い分の医療費など
‣相続財産に含まれないもの
相続財産は、基本的には被相続人のもつ一切の権利義務になりますが、例外的に相続財産に含まれないもの、つまり相続によって承継されないものもあります。ここでは、相続財産に含まれない権利義務をご紹介します。
✅ 被相続人本人だからこそ与えられている権利や義務(一身専属権といいます)
具体的には代理権、労働者である地位、扶養請求権、生活保護受給権、国家資格、親権、罰金、離婚請求権など
✅ 受取人が相続人など生命保険の保険金等(相続人が固有に取得する権利)
生命保険金等は、受取人固有の財産であると考えられています。ただし、相続税との関係では、受取人が相続人である場合には課税対象となる相続財産に含まれる場合があります。
✅ 祭祀(さいし)に関する権利
上記2つの財産とは別に、相続財産ではあるものの、通常の相続ルールでは分配されない財産として「祭祀に関する権利」があります。祭祀に関する権利とは、祭祀を営むための系譜(家系図)、祭具(仏壇・位牌など)、墳墓(墓地・墓石)などの財産のことですが、これらの権利は先祖のお墓を守り供養する人(祭祀主催者と言います)に承継されることとされています。
また香典や弔慰金については金額にもよりますが、通常は相続財産には含まれません。
✅ みなし相続財産
少しややこしい話しですが、民法上の相続財産ではないけれども、相続税法上の相続財産になるものを「みなし相続財産」と言います。亡くなった日には被相続人が財産として持っていなかったものの、被相続人の死亡を原因として相続人がもらえる財産になります(相続税法3条)。具体例を挙げると、上記の死亡保険金や死亡退職金です。ただ、非課税限度額がありますので全額が相続財産となるわけではありません。
みなし相続財産も相続税の計算上で関係してくるので、確認しておくとよいと思います。
2,相続財産(遺産)の調査方法・探し方
相続財産の主なものについて、どのように調べていくかについてご紹介したいと思います。
‣預貯金
①銀行の預金口座を確認
別居している場合はもちろんですが、同居している家族であっても、どこの銀行で口座を開設しているかは案外分かりません。まずは亡くなった方の持ち物から、通帳やキャッシュカードがないか確認をします。
通帳やカード以外に、郵便物も重要です。通帳やカードが見当たらなくても、銀行から様々な通知や取引の報告書が届くことはよくありますので、郵便物は必ずチェックしましょう。
通帳やキャッシュカード等が見つからない場合でも、自宅や職場の近くにある銀行に電話や窓口で直接問い合わせをすれば、口座の有無や残高について開示してくれる場合もありますので、思い当たる銀行等に問い合わせてみるとよいでしょう。残高だけでなく取引履歴も開示を求めることができます。取引履歴から他の相続財産が判明することはよくありますので、取引履歴も取り寄せておきましょう。
相続開始時(被相続人死亡時)の預金残高は、相続税申告の基準にもなりますので、金融機関から預貯金残高証明書や定期預金証や利息計算書を出してもらうことをおすすめします。
②各口座の預金残高を確認(預金残高証明書を取得)
被相続人の銀行口座を確認できたら、次はそれぞれの預金残高を確認し、残高証明書を取得します。
残高証明書の発行手順は以下のとおりです。
- 必要な書類(※) を準備し、口座のある銀行に名義人の死亡を連絡(口座の入出金停止=凍結)
- 預金残高証明書を発行
※必要な書類とは・・・
- 被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
- 相続人の戸籍謄本(手続をする人が法定相続人とわかるもの)
- 相続人の身分証明書(顔写真付きの公的機関発行のもの)
- 相続人の実印と印鑑証明書
※ただし、求められる書類は金融機関ごとに異なりますので、各金融機関に問い合わせてご確認ください。
‣有価証券
株式や投資信託などの金融商品も調査しましょう。
見つかった場合は証券会社や信託銀行に問い合わせて残高証明書を発行してもらい、その上でそれぞれの評価方法に基づく評価額の算出を行います。
①株式や投資信託などの金融商品を確認
株式や投資信託をはじめとする金融商品は、電子化しているものが多くあり探すのが難しい場合がありますが、証券会社や信託銀行などを窓口にして取引を行うことがほとんどです。
従って、口座開設時の書類(控え)や郵便物などが手がかりになります。
②金融商品の残高と評価額を確認
金融商品を保有していることが確認できたら、次はそれぞれの証券会社や信託銀行などに残高証明書を発行してもらいます。手順や必要な書類は、「銀行口座の預金残高を確認」する際と、ほぼ同じです。
注意点としては、残高証明書では端株(はかぶ)といって取引単位に満たない数の株式は記載されません。
後日郵送される「配当金支払通知書」と株数を確認して残高を確認してください。
また金融商品を財産目録に記載する際の評価額の算出は難しいので税理士さんなどに依頼することをお勧めします。
相続の際には、この残高をもとに遺産分割協議を行います。
協議で合意した内容は相続税の申告に必要になりますので、遺産分割協議書に合意内容をしっかり残しておきましょう。
‣不動産
不動産も、自宅に権利証や登記情報通知書、固定資産税納税通知書・課税明細書など不動産に関する資料がないか探します。また、銀行の預金通帳から固定資産税の引き落とし明細を探すのも一つの手がかりになります。
なお、不動産は一定の評価額を下回る場合には、固定資産税がかかりませんので、固定資産税納税通知書の記載が全てだとは限りません。固定資産税の課税・非課税を問わず、所有不動産を一覧にしたもの「名寄帳(なよせちょう)」を取り寄せましょう。
ただし、名寄帳は、原則として不動産の所在する市区町村ごとに作成されますので、自宅以外のどのあたりに不動産があるのかある程度わかっていることを前提として、その所在市区町村に請求することになります。
固定資産税非課税であっても、たとえ未登記であっても、亡くなった方の不動産であれば原則として相続財産になりますので、ひとつひとつ丁寧に調べていきましょう。
‣自動車など
自動車やバイクも相続財産となります。
これまでの預金通帳や不動産とは違い、確認はしやすいと思いますが、自動車やバイクの所有者(名義人)が被相続人であるかどうかをしっかり確認しておきましょう。
車検証や自動車税納税証明書を見れば確認することができます。
財産目録に記載するために必要な評価額は、買取査定業者に査定してもらった査定額を記載しましょう。
‣みなし相続財産(生命保険など)
「みなし相続財産」とは、被相続人が亡くなったことによって受け取ることができた財産のことです。
代表的なものは生命保険の死亡保険金です。
被相続人の保険証券の有無、保険会社からの郵便物、銀行口座から引き落としされている保険料がないか、また確定申告書類の生命保険料控除欄などを確認します。
生命保険金の場合、受取人が誰になっているかで相続財産に含まれるかどうかが変わります。
生命保険金があるという事実も重要ですが、同時に保険金の受取人が誰になっているかも重要なポイントです。
①受取人が被相続人になっている場合
受取人が被相続人となっている生命保険金は、遺産に含まれ、相続の対象となります。
相続の際には、相続人全員による遺産分割協議で、誰がどのように取得するのかを決めなければなりません。
また手続きの際は、相続人のうちの一人が保険会社に連絡して、保険金の請求手続きに必要になる書類を取り寄せます。
②受取人が相続人になっている場合
受取人が相続人の誰かになっている生命保険金は、受取人である相続人の固有の財産となります。
この場合、相続の際は遺産分割協議の対象にする必要はありません。
手続きの際は、受取人とされた相続人が保険会社に連絡して、手続きに必要になる書類を取り寄せます。
3,財産目録は作っておきましょう
財産目録というのは、これまでご説明したきたように被相続人の財産がひと目で分かるようにまとめた表のことを言い、プラスとなる財産の他に、借金などのマイナスとなる財産もすべて記入しておくことで、相続財産の内容を明確にすることができるものです。
財産目録は必ず作成しなければならない法律上の義務はありませんが、相続税の申告が必要かどうかの判断、相続税の納付が必要な場合の納付額、相続対象財産の明確化などに役立ちます。
そして何より、遺産分割協議をはじめとする相続手続きがスムーズに進みますので、財産目録はぜひ作るようにしてください。
4,財産目録作成の期限
財産目録の作成は法律上の義務ではありませんので、作成の期限はないように思いますが、財産を相続するのかどうかを判断する時期が決まっているので、あまりのんびりと構えるわけにはいきません。
まず相続開始から3ヶ月で「相続放棄」の申述期限を迎えます。
相続放棄というのは、字の通りですが相続する権利を放棄することで、例えばプラスの財産より、借金のようなマイナスの財産のほうが多かった場合に利用されます。
この相続放棄をするかどうかの判断も、財産の内容が分かっていないと決められません。
その他にも、相続開始の10ヶ月後には「相続税の申告」が必要になります。
これは、相続財産が基準額よりも多い場合に申告し納付するもので、実際の相続財産の評価額が分かっていないと、その基準を超えているかどうかも判断ができません。
このように財産目録作成の必要性は先に述べた通りですが、作成時期の目安としては遅くとも相続開始から3ヶ月以内に作成されることをお勧めいたします。
5,まとめ
相続財産の調査は、とにかく丁寧にじっくりと進めていくしかありませんが、これまでご紹介してきた内容を元に進めていただければ確実に前に進みますのでご参考になさってください。
とはいえ、遺品の中から手がかりを発見できてもそこから先、金融機関への連絡や役所での手続きなどが必要であること、そして相続放棄の申述期限や相続税申告期限も迫ってくる関係で、時間はあっという間に過ぎてしまいますので、専門家に間に入ってもらって進めて頂くことを検討されてもよいと思います。当事務所でも対応させて頂きますのでよろしければご連絡お待ちしております。
「公正証書遺言」「財産目録」の作成なら当事務所へご相談ください
当事務所は、京都府向日市、長岡京市を中心に公正証書による遺言書の作成や財産目録の作成をはじめとする相続支援を専門とする行政書士事務所になります。将来の不安を安心に変えるお手伝いを精一杯させていただきますので、お困りごとがありましたら一度当事務所へご相談ください。オンラインによるご面談も可能です。
案件によっては司法書士や税理士など各専門家と連携しながら相続人の皆様にかわり当事務所行政書士がコーディネートさせていただきます。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
行政書士はやし行政法務事務所
代表行政書士 林 宏雄
日本行政書士会連合会(第17271844号)
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