ひとり暮らしをされている高齢者にとって「見守り契約」は心強い契約です。しかしこの見守り契約でできること・できないことがありますので契約する前に押さえておきましょう。
目次
一人暮らしをしている高齢者の不安
少子高齢化となった現代では、高齢者だけの世帯も増えています。
一人暮らしをしている高齢者の中には、「身近に頼れる親族や知人もおらず、もし病気やケガなどになったらどうしたらいいのか・・・」という不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
定期的に連絡をとり合えるような親族や知人がいなければ、健康状態が悪くなったり、判断能力が低下してきたりしても、気付いてもらえないかもしれません。最悪の場合、孤独死を招いてしまうことにもなってしまいます。
信頼できる人に見守ってもらう「見守り契約」
上記のように身近に頼れる親族や知人が仮にいない場合であっても、定期的に連絡をとってもらえる信頼できる第三者がいてくれたらどうでしょう。
心身の健康状態や生活の状態などを見守ってもらうことができますので、大きな安心感につながるはずです。
このような目的から、信頼できる特定の人に見守ってもらう契約が「見守り契約」と呼ばれるものになります。
(参考記事「高齢者・おひとりさまの為の「見守り契約」を行政書士が解説」)
見守り契約でできないこと
一人暮らしをされている高齢者にとって心強い見守り契約ですが、この見守りでは対応できないこともありますので挙げてみたいと思います。
この点を押さえておいて頂くと、トラブルを未然に防ぎながらよりスムーズなサポートを受けられると思います。
①身の回りの世話
見守り契約はあくまでも見守りをすることが主な目的になっています。
したがって、自宅に訪問するついでに、スーパーで買い物をしてきてもらう等は対応していません。
見守り契約で生活におけるあらゆる面をサポートしてもらえると思い、訪問の際に掃除や買い物などを頼んでしまうことで起こりやすいトラブルです。
もし日常生活における支援を受けたいということであれば、地域の社会福祉協議会などが行っている福祉サービスなどを検討されるとよいかもしれません。
②判断能力が低下した後
判断能力が低下した後は、見守り契約では対応できなくなってしまいます。
このように、判断能力が低下した後に対応するのは「後見制度」になります。
後見は法定後見と任意後見の2つに分かれています。
法定後見制度における法定後見人は家庭裁判所が選任するのに対し、任意後見制度における任意後見人は本人が前もって契約で決めている点が異なります。
いずれの制度にしても判断能力が低下した人に代わって後見人が代理人となり法律行為を行います。
見守り契約を受任する人がそのまま自動的に後見人になるわけではありませんので注意が必要です。
そうした意味で、任意後見契約と組み合わせることがほとんどです。
(参考記事「任意後見制度とは」)
③亡くなった後の手続き
見守り契約を結んでいても、それはあくまで生前のことであって、亡くなった後の手続きをすることはできませんので、本人が亡くなった時点で見守り契約は終了となります。
なお、人が亡くなると様々な事務手続きが発生します。
例えば、
- 死亡届の提出
- 病院への支払い
- 葬儀・納骨
- 公共料金等の支払い・解約
- 健康保険・年金などの行政手続き
上記は手続きの一部ですが、亡くなった後のいわゆる死後事務手続きは見守り契約の範囲外です。
(参考記事「遺言では不完全!?おひとりさまにお勧めする「死後事務委任」」)
見守り契約は他の契約と組み合わせることで力を発揮する
上記のように、見守り契約というのは、身体が不自由になってきたり判断能力の低下や亡くなった後の手続きなど、この先誰もが通る、あるいは可能性のある事態が起きた時に、スムーズにサポートが受けられるための前段階の契約です。
つまり、「見守り契約+○○契約」という形で組み合わせることで、より安心して今を生きることができます。
具体的には
- 見守り契約+財産管理委任契約
- 見守り契約+任意後見契約
- 見守り契約+死後事務委任契約
- 見守り契約+任意後見契約+死後事務委任契約
というふうに、ご自身のスタイルに合わせて組み合わせることが大切です。
(参考記事「「財産管理委任契約」を活用すべき具体例などポイント解説」)
まとめ
見守り契約は、定期的に連絡をとったり、様子を見に自宅まで来て今の健康状態や生活の状態などを見守ってもらえるため、大きな安心感を得ることができ、精神的にも安定した生活を送ることができる契約ですが、この先の自身の身体に何かが起きた際にスムーズにサポートを受けるための契約でもあります。ご自身の今後のライフプランにあわせてどのような組み合わせがベストなのか、気になる方は行政書士や司法書士などの専門家にご相談されてみてはいかがでしょうか。
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