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同じ日付の遺言書が2通出てきたときの優先方法

当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

京都府向日市、長岡京市を中心に公正証書遺言の作成支援をしております行政書士の林宏雄です。

 

今回のテーマは「同じ日付の遺言書が2通出てきたときの優先方法」について。

 

同じ日付の遺言書が出てくるケースは、それほど多くないかもしれませんが実際にある話しです。

故人に直接確認するわけにはいきませんし、残された相続人としては何をどうしたらよいのか・・・

今回はその問題の解決につながる内容をご紹介したいと思います。

 

目次

1,遺言の撤回は自由にできます

遺言というのは、遺言者が生前に表示した最終の意思を尊重して、これに法的な効果を与えるものです。

 

そこで民法は、遺言者はいつでも遺言の方式に従って、遺言の全部又は一部を撤回することができるものとし、かつ撤回することができる権利を放棄できないものと定めています。

 

これは、いったん有効に遺言書を作成しても、遺言が効力を生じるまでの間に事情が変わったり、遺言者の気が変わったりすることも当然あり得ますので、前にした遺言に拘束されることなく最終の意思が尊重される必要があるからです。

 

2,撤回の方法

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って遺言の撤回をすることができます。

*撤回方法については過去記事(自筆証書遺言の撤回や変更をする方法)参照

 

この方式は、前の遺言の方式と異なっていても構いません。

 

撤回が遺言の方式によらなければならないとされたのは、遺言の撤回の偽造・変造を防止するためとされています。

 

ただし、例外的に、遺言の方式による撤回がなされなくても、遺言者が撤回したものとみなされる以下4つの場合があります。

  1. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、抵触する部分については後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
  2. 遺言者が遺言の後、その内容と抵触する生前処分、その他の法律行為をしたときは、これらの行為で遺言の抵触する部分を撤回したものとみなす。
  3. 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については遺言を撤回したものとみなす。
  4. 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときは、破棄した部分については遺言を撤回したものとみなす。

これらの場合は、遺言者が遺言と矛盾する行為をしており、遺言を撤回する意思であると推測されます。

 

3,後の遺言が優先されるのが原則です

法律では、自筆証書遺言に日付の自書が求められています。

 

これは、遺言作成時の遺言能力があるかどうかを判断するだけではなく、内容の抵触する複数の遺言について、どれが先か後かを確定する必要があるためです。

 

複数の遺言が存在し得ることは法律上も想定されていて、それらが相互にまったく無関係であるとか、互いに両立し得るものであれば、その複数の遺言はいずれも有効となります。

 

しかし、複数の遺言の内容が抵触する場合には、そのいずれが優先されるのかを決定しないと相続人は困ってしまいますね。

 

そこで民法は、遺言者が前に遺言したこと自体を忘れたり、遺言したことは覚えていてもその内容を忘れたりした場合などのために、遺言者に撤回の意思がなかったとしても、抵触する遺言は前の遺言を撤回したものとみなして、死亡時に一番近い後の遺言を優先することとしています。

 

4,抵触する同じ日付の遺言

内容が抵触する2通の遺言が同じ日付でなされている場合は、遺言書の内容およびその他一切の事情によってその先・後を決定しないといけません。

 

いずれにしても日付が明記されていて、しかも自書されているのであれば、日付という点ではどちらの遺言も無効とすることはできませんので、さまざまな事情を考慮した上でその先・後を決め、後の遺言と抵触する内容の部分については前の遺言が撤回されたこととなります

 

ここで、遺言書の内容やその他一切の事情を考慮しても、どうしても2通の遺言書の先・後を決定することができない場合が生じることも考えられます。

 

しかし民法は、一切の事情をくみ取って判断すれば必ずその先・後は決められるでしょ、という立場を採用しているため、先・後が不明な場合に関する規定を設けていません。

 

そこで、この場合の取り扱いについては主として学説に委ねられていて、以下2つの考え方に大別されています。

  1. 2通の遺言の先後がまったく不明の場合は、同時に矛盾する意思表示がなされたものとして抵触する部分は共に無効とする説
  2. 抵触する部分も、共に有効として一方を執行し他方に対して賠償すべきだとする説

通説としては、1.抵触する部分のみを無効とするが一般的です。

 

いずれにしても、話し合いをして相続人全員が同意する必要がありますね。

 

話し合いがまとまらなければ法定相続分で分割することになるでしょう。

 

まとめ

  • 複数の遺言書が存在する場合には、死亡時に最も近い、後に作成された遺言が優先されます。
  • 同じ日付の場合は、遺言内容その他一切の事情から先後を決めることになります。
  • それでも決めることができなければ、その抵触する部分は無効として遺産分割協議を行います。
  • 遺産分割が整わないのであれば法定相続分で分割するか妥当でしょう。

(補足)

撤回とみなされるのは、前の遺言を失効させなければ後の遺言の内容を実現することができない程の内容矛盾の場合に限られます。一部内容のみが抵触する遺言については、その抵触部分の制限は受けても、遺言自体は撤回されたことにはなりません。

 

法定相続分で分割するのであれば、何のために遺言書を作成したのか分からなくなってしまいますね。

そうなってしまわないように、遺言書を作成するのであれば専門家を交えて作成しましょう。

 


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最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

行政書士はやし行政法務事務所

代表行政書士 林 宏雄

 

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