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遺言の撤回方法や書き方など解説します

初稿:2021.7.17

更新:2024.3.17

一度書いた遺言を撤回することは法律上認められています。

それではどのようにして行うのでしょうか。

方法や撤回とみなされる場合について解説していきます。

 

目次

1. 遺言の撤回の自由

     
  遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる。  
  <民法1022条>  
     

遺言はいつでも自由に全部または一部を撤回することができます

 

遺言者の最終の意思を尊重するためです。

撤回するにあたっては、撤回の理由は問われません。

 

気が変わったからということで撤回することもできますし、当事務所のお客さまには、海外旅行に行く前に必ず新たな遺言書をつくられる方もいらっしゃいます。

 

2. 遺言の撤回方法

具体的にどのようにして遺言の撤回をするのかというと、

新しく遺言を作成して、そこに前の遺言を撤回する」と書くことによって行います。

 

このほか、遺言が撤回されたものとみなされる場合として次のような場合があります。

 

日付の異なる内容の相矛盾する遺言が2通以上ある場合

これは、後の遺言前の遺言を撤回したものとして扱われます。

自筆証書遺言、公正証書遺言といった方式は問われません。

例えば、後の日付の自筆証書遺言によって前の日付の公正証書遺言が撤回されたとみなされることもあります。

 

遺言をした後に遺言者が遺言の内容と矛盾する処分をした場合

例えば、ある物を遺贈する遺言をした後に、その物を第三者に売却してしまったような場合です。

「遺贈」と「売却」という内容矛盾が生じているので、前の遺贈の部分は撤回されたとみなされます。

 

遺言者が遺言書を故意に破ったり、焼いたりして破棄した場合

ただし、公正証書遺言である場合には、その原本は公証人役場に保管されていますので、仮に手元にある正本や謄本を破棄したとしても、それは撤回したとはみなされません。

 

また、遺言者が自筆証書遺言の文面全体の左上から右下にかけて赤色ボールペンで故意に斜線を引いた場合、「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し、遺言を撤回したものとみなされるとした最高裁判決があります。(最判平27.11.20)

 

遺言者が遺言に書いた遺贈の目的物となっている物件を破棄したとき

この場合も遺言は撤回されたものとして扱われます。

 

3. 取消し事由のある遺言の取消し

これまで述べた撤回とは別に、特別の理由にもとづく遺言の取消しが認められるかということも問題になります。

 

例えば、詐欺、強迫を理由に遺言の取消しを認めるべきかという問題です。

 

これについては、遺言の撤回は理由を問わず自由にできるから、あえて特別の理由にもとづく取消しを認める実益はないという考え方もあります。

 

しかし、遺言者の死後、その相続人による取消しを認める必要があることから、撤回とは別に詐欺、強迫など、特別の理由にもとづく取消しを認めるのが一般的です。

 

4. 撤回をする上での注意点

撤回は新たな遺言書を書く事で容易に行うことができます。

ただし前の遺言書をそのまま保管していると、どちらが新しい遺言書か分からなくなってしまう恐れもありますので要注意です。

 

新たな遺言書を書くなどして撤回する場合は、古い方の遺言書はすぐに破棄して、新しい有効な遺言書のみを保管するようにしておきましょう。

 

遺言・相続のお手続きなら当事務所へご相談ください

当事務所は、京都市を中心に関西全域で遺言書の作成支援をしている行政書士事務所です。

 

確実に遺言を残しておきたいとお考えの方は一度、当事務所にご相談ください。