自筆証書遺言につける財産の目録をパソコンで作成することが出来ることをご存知でしょうか?
全文を手書きするのはちょっとしんどい・・・
そういう理由から遺言書の作成に踏み切れなかった方も多いと思います。
パソコンで作成するといっても守らなければならないポイントもありますので、今回の記事がご参考になれば幸いです。
目次
1、本来の自筆証書遺言の書き方
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。 | ||
(民法968条) | ||
自筆証書遺言というのは読んで字のごとく、遺言者(遺言をする方)がその全文、日付、氏名を自らの手で書き、印を押す必要があります。
このように従来は、全文を手書きしなければならなかったため、所有している財産の種類が多ければ多いほど大変な思いをして財産の内容を手書きしなければならないというケースもありました。
2、法改正により財産目録はパソコンでの作成が可能に
それが2019年の法改正により、自筆証書遺言の方式が緩和され、相続財産の内容を記載した「財産目録」については手書きで作成しなくてもよいことになりました。
条文では下記のように表現されています。
(略)、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。(略) | ||
(民法968条②) | ||
「自書することを要しない」ということはパソコンで作成することもOKということです。
パソコンでなくても、誰かに代筆してもらうことや、財産の証明書類のコピーを付けても構いません。
3、財産目録を作成することのメリット
財産の内容は遺言書の本文に直接記載してもよいですし、財産目録として本文とは別紙に作成しても、どちらでも法律上は問題ありません。
問題はありませんが、できれば財産目録を作成しておくことをおすすめします。
遺言書に財産目録を付けると、以下のメリットがあります。
✅ 財産に応じた相続対策として活用できる
相続対策を行うには、まずどのような相続財産があるのかを把握した上で、その財産に応じた対策を考えていくことになります。
財産目録は、種類や内容、プラスの財産とマイナスの財産などを一覧で記載するため、それらを合わせて見ることで、必要な相続対策を行うことができます。
✅ 相続財産調査の手間が少なくなる
相続手続きを進めていくうえで、最も時間を要する作業が、相続財産の調査です。
調査は、考えられる財産を1つずつ片っ端から調べて特定していく作業となり、手間と時間がかかります。
ここで財産の調査漏れがあると、金額によっては相続税の過少申告などにも繋がるため、確実な調査をする必要があります。
遺言者が漏れのないしっかりとした財産目録を作成しておくと、格段に手間が減ることになります。
✅ 相続手続き・遺産分割協議がスムーズになる
相続には様々な手続きが必要になります。
死亡届や社会保険関係はもちろんのこと、不動産の相続登記など、所有している財産に関する手続きなど多岐に渡ります。
財産目録があると、どの財産にどんな手続きが必要なのかを確認したりスケジュールを組むことができます。
そうすることで、遺族の負担を大きく減らすことができるでしょう。
また、財産目録があることで、相続財産全体の状況を把握しやすくなりますので、遺産分割協議も進めやすくなります。
以上のように、財産目録を作成しておくメリットは多いです。
また目録を「パソコン」で作成しておくことのメリットは、内容を修正するのが比較的容易にできる点が挙げられます。
遺言書は一度作成したら完成というものではありません。
なぜなら財産の状況は変わる可能性があるからです。
そういう意味では特に大きな財産の変更があればその都度遺言書を書き直した方がよいでしょう。
書き直すとなれば、パソコンにデータ保存しておくと修正作業が楽になります。
4、財産目録をパソコンで作成する場合の遺言書の書き方
2019年の法改正によりパソコン利用や自筆以外の作成方法が認められたのは、遺言書につける「財産目録」です。
このルールによってこれまで全文を手書きしなければならなかった労力を減らすことができるようになりました。
遺言書の本文(手書き)とは別に財産目録(パソコン)を作成する場合の書き方を見てみましょう。
❶ 遺言書の本文
遺言書の本文は「全文手書き」「日付」「署名」「押印」が必要です。
❷ 別紙「財産目録」
関係書類のコピー(例えば登記簿謄本や通帳のコピーなど)を添付することで、財産目録とすることも可能です。
その場合も必ず署名・押印は必要です。
❸ 字の訂正
遺言書の作成後、誤字脱字が見つかることがあります。
その場合も法律で規定されている方法で訂正することができます。
どのように規定されているのかというと、自書による部分の訂正と同様に、遺言者が変更の場所を指示して、これを変更した旨を付記してこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じないこととされています。
具体的には、訂正したい箇所に二重線等を引き、二重線の上に押印し、その横に正しい文字を記載します。
そして、遺言書の末尾などに、「〇行目〇文字削除〇文字追加」と自書で追記して署名をする、ということになります。
このように、訂正方法もかなり厳格に定められています。
もし訂正の必要がある場合は、できる限り始めから書き直した方がよいと思います。
当事務所でサポートさせて頂く場合もそのようにお伝えしています。
訂正前のものを残していると後々混乱が生じますので必ず破棄しましょう。
❹ 押印に使用する印鑑
押印については特別な定めはありません。
したがって、認印でもルール上はOKです。
しかしながら、間違いなく本人が作成したという特定と、遺言書の効力で争いになる可能性を少しでも減らすためには押印は全て実印が望ましいです。
5、まとめ
2019年の法改正によって、自筆証書遺言の作成にかかる負担が減り、随分と作成しやすくなりました。
今回ご紹介した財産目録をパソコンで作成できるのはその一つです。
財産の内容がシンプルであれば遺言書の本文のみで完結してもよいかもしれませんが、財産の種類が多い方や、まだお若くて財産の変動が今後も十分想定される方は財産目録をパソコンで作成されることをおすすめします。
その他にもメリットがたくさんありますので今回の記事がご参考になれば幸いです。
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行政書士はやし行政法務事務所
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