目次
1. はじめに
この記事は以前に書いた「遺言書にはどんなことを書いているの?」の続編になります。
前回も書いたように、遺言書には「何でも」書くことは出来ますがその内容が有効かどうかは別の話しという部分です。思いがたくさんあって書いたのはいいけど、無効となっては遺言者さんの意思を実現できず残念な結果になってしまいますので注意が必要です。
それでは見ていきましょう。
2. 法定遺言事項
遺言には、遺言者の意思を自由に書くことができます。しかし先にも述べたように遺言書に書いてあるすべてが相続人に対する強制力を持つわけではありません。
遺言として強制力がある事項(=「法定遺言事項」といいます)は民法やその他の法律で限定されていますので現在、法定遺言事項として規定されているものをご紹介します。
<Ⅰ.相続に関する事項>
- 推定相続人の廃除とその取消し
- 相続分の指定又は指定の委託
- 特別受益者の相続分に関する指定
- 遺産分割方法の指定又はその委託
- 配偶者居住権の設定(令和2.4.1施行)
- 遺産分割の禁止
- 共同相続人間の担保責任の定め
- 遺贈の遺留分侵害額負担方法の指定
<Ⅱ.財産処分に関する事項>
- 包括遺贈及び特定遺贈
- 一般財団法人の設立
- 信託の設定
<Ⅲ.身分に関する事項>
- 認知
- 未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
<Ⅳ.遺言執行に関する事項>
- 遺言執行者の指定又はその委託
<Ⅴ.その他>
- 祭祀承継者の指定
- 保険金受取人の指定又は変更
おおよそ上記の項目が法定遺言事項として規定されています。
3. 法定遺言事項以外の記載はどうなるか
例えば
- 葬儀は簡素にしてほしい
- 遺体の臓器は医療機関に提供してほしい
などが書かれていた場合、遺言者の意向としては明確にくみ取れますが法的な強制力はないことになります。これらのような法定遺言事項以外の事項の実現を望むのであれば、生前からご家族などとよく話し合って理解を得ておくことが大切です。
4. 遺言の対象となる財産
相続、遺贈の対象となるのは被相続人、遺言者の財産です。
ここにいう「財産」というのはその被相続人、遺言者個人の財産になります。
「個人の」ですから会社は、たとえ一人の個人会社であっても法人になりますので、会社の財産の処分について遺言で定めることはできません。もし仮に記載があったとしてもその部分については遺言として無効となります。
5. 生前行為でもできる事項
法定遺言事項の中で、一部生前に行っておくことができる事項もあります。
- 推定相続人の廃除とその取消し
- 特別受益者の相続分に関する指定
- 一般財団法人の設立
- 信託の設定
- 認知
- 祭祀承継者の指定
については、民法その他の法律によって生前に行っておくことができます。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか。
ご自身の残したい財産、思いによっては遺言ではなく、上記のように生前行為として行っておいた方がよいケースもあるでしょう。
ご家族にとって大事な事でもありますから遺言で残しておくか、それともご家族と相談しながら
生前に必要な手続きをしておくか慎重に決めていく必要があると思います。
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当事務所は、京都市を中心に関西全域で、生前の相続対策の支援をしている行政書士事務所です。
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まずはご希望やお困りごとなど、お気軽にご相談ください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
行政書士はやし行政法務事務所
代表行政書士 林 宏雄
日本行政書士会連合会(第17271844号)
京都府行政書士会会員(第2655号)
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