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遺言執行者とは
「遺言執行者」という言葉を聞いたことはありますか?
何となく意味は分かるのですが、法律ではこのように規定しています。
「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」 | |||
(民法1012条1項) |
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遺言の執行に必要な一切の行為というのは、相続財産の保存行為(修繕含む)、利用行為、改良行為とされています。もっと具体的に挙げてみると、
- 相続財産の引き渡しおよび管理
- 相続財産の関係書類の引き渡し及び管理
- 相続登記の申請
- 預貯金の払い戻しおよび解約
- 遺言執行の際に必要となった訴訟行為
といった行為を行う権利を持っているということです。
2019年の相続法の改正により、遺言執行者に関する規定が以下のように変更されました。
「遺遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」 | |||
(旧民法1015条) |
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「遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。」 | |||
(改正民法1015条) |
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この一文によって遺言執行者は単なる相続人の代理人ではなく、あくまで亡くなった被相続人(遺言者)の意思を実現する者として強い権限が認められました。
また、遺言執行者は相続人全員に対して「相続発生の通知」など、遺言の執行を公平に行うための義務も負っています。
遺言執行者を指定するメリット
遺言執行者の選任には、大きく分けて3つのメリットがあります。
① 相続人の手間がかからない
遺言執行者が相続人を代表し、相続人や相続財産の調査、所有権移転登記(相続登記)などを行ってくれるため、相続人の手間がかからず相続手続きがスムーズになります。
② 相続人が勝手に相続財産を処分できなくなる
遺言執行者には、相続財産の管理・処分をする権限を持っています。裏を返せば、相続人が不動産の売却をするなど、勝手に相続財産を処分することができなくなります。
③ 子の認知や推定相続人の廃除・取消しを行ってくれる
子の認知や推定相続人の廃除・取消しは遺言執行者にしかできません。
これらは非常に大きなメリットになりますので、争族を避けたいと思われる遺言者には、遺言執行者を指定することをおすすめしていますし、上記が必要な場合には遺言執行者の選任が不可欠になります。
また、デメリットを挙げるとすれば、相続人の中から遺言執行者を指定することも可能ですが、その場合は他の相続人との関係からトラブルを起こしてしまう恐れがあることや、弁護士や行政書士といった専門家に依頼すると費用がかかるという点があります。しかしこの点は円滑な相続を実現するための手段として有効だと私は考えますが、そこは個人の価値観によるところです。
遺言執行者を定めない場合はどうなるか
遺言書に遺言執行者を定めない場合は、不動産の名義変更など遺言の執行は相続人全員で行うことになりますが、相続人の中に協力をしてくれない人がいる場合には、実際には遺言の執行がいつまでたっても行えないことになってしまいます。この場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てて遺言執行者を選任してもらう必要があります。
遺言書に遺言執行者の定めをあらかじめ書いておけば、家庭裁判所に選任の申立てをしなくてもすみますので、基本的には遺言執行者の定めを記載しておいた方がよい場合が多いです。ただし、遺言執行者にはその就任を事前に承諾してもらうことが前提になります。
先にも述べたとおり、遺言の内容に子の認知や推定相続人の廃除・取消しが含まれている場合には、遺言執行者の定めがないと手続きができませんので、必ず指定するようにしてください。
このように遺言執行者の指定を含め遺言書を書くにあたっては法律の知識が必要になりますので、やはり専門家に相談するとよいと思います。
遺言執行者の選定方法
遺言執行者を選定する方法は以下の3通りです。
- 遺言書で遺言執行者を指名する
- 遺言書に遺言執行者は第三者に決めてもらうように指定する
- 裁判所に選定してもらう
遺言執行者として相続手続きを任せたいという人が、遺言者自身の中ではっきり決まっている場合は、あらかじめ遺言書で指名しておくとよいですが、繰り返しになりますがこの場合、遺言執行者に指名したことを黙ったままでいると、後から遺言執行者になることを承諾されない可能性もありますので、遺言執行者として指名したい人に遺言執行を任せたい旨を伝えて、事前に承諾してもらいましょう。
もし遺言執行者を誰にすればいいか決まっていない場合は、遺言執行者を選定する第三者を指定しておきましょう。指定された第三者が相続時の状況に応じて適切な遺言執行者を選ぶように段取りをしておくと、相続人の間でのトラブルを防ぐことができます。
遺言書で遺言執行者の指名がなかったり、遺言執行者として指名された人がすでに亡くなっていたりした場合は、家庭裁判所に選定してもらうという方法もあります。
家庭裁判所に選定してもらう場合は、まず管轄の家庭裁判所に以下の書類を提出して遺言執行者の選任申し立てを行いましょう。
遺言執行者の選任申し立てに必要な書類
- 申立書(家庭裁判所HP)
- 遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本
- 遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票
- 遺言書のコピーまたは遺言書の検認調書謄本のコピー
- 遺言者との利害関係を証明する資料(戸籍謄本など)
申し立てには遺言書1通につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手代がかかります。
遺言執行者の申し立てが受け付けられると、家庭裁判所で審判が行われ、遺言執行者が選定されます。
遺言執行者が遺言者より先に死亡していた場合
遺言執行者が遺言をした人よりも亡くなってしまった場合はどうなるのでしょうか。
法律では、以下のように定められています。
「遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる」 | |||
(民法1010条) |
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つまり、遺言者や相続人が家庭裁判所に対して別の遺言執行者を選任するよう申立てができることになっています。しかし、家庭裁判所での手続きとなると時間もかかりますし、やはり負担は大きいものです。
そのため、遺言執行者が先に亡くなっても問題ないように準備しておくことが大切です。
具体的には、以下のような手段が考えられます。
① 遺言執行者は遺言者よりも若い方を選任する
遺言者が信頼できる知人に執行者をお願いしたとしても、その知人が遺言者と同世代あるいは年上ということになると、どちらが先に亡くなるか・・・こればかりは誰にもわかりませんが、やはり遺言者よりもお若い方に依頼する方がよいでしょう。
② 遺言執行者を複数選任しておく
遺言執行者は、一人だけでなければならないという規定はありませんので、あらかじめ複数人を執行者として遺言書に記載しておくと、一人が亡くなってしまった場合に備えることができます。
③ 予備の遺言執行者を選任しておく
「遺言執行者〇〇が亡くなった場合は、〇〇を遺言執行者とする」と予備的な遺言執行者を決めておくことで、一人が亡くなった場合に対処することができます。
まとめ
遺言書を作成するのであれば、公正証書であれ自筆証書であれ遺言執行者を定めておいた方がよい場合がほとんどです。しかし、遺言の執行を託したい人の承諾を得ることができたとしても、遺言書への書き方などで不備があっては遺言者の意思通りに執行されない可能性もありますし、遺言執行者として指定された人も困ってしまいます。そういうリスクも考えると、法律専門職を指定しておくと安心です。選択肢の一つとしてお考え頂ければと思います。
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当事務所は、京都市、長岡京市、向日市を中心に、遺言書の作成支援を専門にしている行政書士事務所です。遺言執行者の就任もお受けいたします。推定相続人の範囲や財産内容をお調べしながら、将来争いになる可能性を出来る限り無くし、スムーズに財産を相続できる書き方をご提案いたします。公正証書遺言を作成されるケースですと、遺言者が公証役場へ足を運び内容の打合せをする必要がございます。当事務所ではお客様に変わり公証人との連絡調整を代行いたします。まずはご希望やお困りごとなど何でもお話し頂ければと思いますので、お気軽にご相談ください。
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