過去に離婚歴があり、前妻との間に子供がいる場合は現在のご家族との関係でトラブルが発生する可能性があります。相続関係やトラブルを防ぐ生前対策についてご紹介します。
目次
1,前妻の子供にも相続権があります
相続に関して、“離婚しているのだから前妻との子供には遺産を渡さなくても大丈夫だろう”、“仮に渡すとしても現在の家族に比べれば少なくてよいだろう”と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし相続に関するルールでは、前妻との子供にも遺産を相続する権利が認められていますし、相続の割合についても離婚の前後で異なることはありません。
過去に離婚歴があり現在は再婚している場合、現妻は必ず相続人になります。(前妻には相続権はありません。)そして前妻との間に子供が一人、現妻との間にも子供が一人いる場合だと具体的な相続の割合は
- 現妻・・・2分の1
- 前妻との子供・・・4分の1
- 現妻との子供・・・4分の1
になります。
【参考記事】▸民法上の法定相続人の範囲と相続割合
2,前妻の子供がいる場合に考えられるトラブル
①前妻との子供と連絡が取れない
前妻の子供と連絡が取れないことが何故問題かというと、遺産分割協議ができないからです。遺産分割協議は相続人全員が集まって遺産をどのように分けるかなどを話し合う場です。前妻の子であっても相続人である以上、遺産分割協議のメンバーになります。
死亡の事実も含めて遺産分割協議の開催連絡をするのは現妻あるいは現妻の子供が想定されますが、前妻の子供からすると、遺産相続には関わりたくないという思いから、連絡が来ても無視をしたり、そもそもお互いに連絡先を知らないことも十分に考えられます。
②遺産分割協議がまとまらない
何とか遺産分割協議の開催が実現したとしても、現在の妻・子供からすると“自分達が遺産の多くを受け取れるだろう”と考える一方で、前妻の子供は“私も相続人である以上、遺産を同じように分けてもらえる権利がある”と考えているかもしれず、こうした状況からトラブルに発展する可能性が有ります。
協議の内容を相続人全員が合意しなければ、遺産分割協議書としてまとめることはできませんから、話し合いがまとまらない間は不動産の名義変更や預貯金の解約手続きは進めることができないことになってしまいます。
③前妻の子供が未成年である
前妻の子供が未成年である場合は、法律上遺産分割協議に参加することができません。したがって法定代理人として前妻が遺産分割協議に参加することになります。
そうなるとどうしても感情の問題がありスムーズに協議できない恐れもあります。
【参考記事】▸相続人の中に未成年の子がいる場合
④遺留分侵害額請求
後にご紹介しますが、遺言書を作成することが対策としては有効です。しかしその遺言書の内容が遺留分を侵害してしまうような内容ですと、遺留分侵害額請求といって侵害額に相当する金銭を請求されてしまうなどのトラブルが起こるかもしれません。
遺留分の割合は法定相続分の2分の1です。
したがって、相続人が①現妻、②前妻の子、③現妻の子の3人いる場合の②前妻の子の遺留分は(2分の1)×(4分の1)=8分の1になります。
遺言者がたとえ現妻とその子供に全ての財産を渡す遺言書を残していたとしても、前妻の子は遺留分として8分の1の権利を持っていますので、これを侵害する場合は要注意です。
【参考記事】▸遺留分って何?
3,前妻の子供がいる場合の生前対策
やはり遺言書は作成しておくべきです。
「前妻の子供(或いは法定代理人としての前妻)」と「現妻、現妻の子供」が遺産分割協議を開催するハードルは高いと言わざるを得ませんので、そういう状況を作らないためにも遺言書の作成は必須と言えます。それがお互いのためでもあると思います。
もし現在のご家族にできるだけ多く遺産を遺したいのであれば遺言書でそのような指定をしておきましょう。
遺言書を作成しておくことで必ずトラブルを防げるかというと、そういう訳ではありませんが、先にも触れましたが「遺留分」を考慮した遺言書を作成することが重要になります。
4,遺留分対策として考えられる二つの方法
一つ目が、遺言書で前妻の子供にも遺留分相当の財産を遺すことです。この問題は遺留分を侵害するから起きる問題であるので、はじめから遺留分を侵害しない財産の配分を決めておけば揉めることはありません。
そして二つ目は生命保険の活用です。相続が発生したときに現在の家族が生命保険金を受け取ることができるようにしておけば、仮に遺留分の侵害があった場合(厳密に言うと遺留分侵害額の請求があった場合)受け取った生命保険金から侵害額を支払うことができます。
ちなみに、生命保険金には相続税控除も認められているので、税金面でのメリットも期待できます。
5,遺産分割協議が進めにくい場合は・・・
前妻との間に子供がいて生前に何の対策も行っていない場合は、相続人全員が集まって遺産分割協議を開かなければなりませんし、実際に預貯金の解約や不動産の名義変更といった相続の手続きには、署名や押印に協力してもらう必要もあります。また、前妻の子供と連絡が取れない、取りづらいという状況もあるかもしれません。
もしそのようなことでお困りであれば、相続の専門家のサポートを受けることも有効です。
専門家であれば職務上請求などで戸籍や住民票を取得し相続人の住所を調査の上、郵送などを通じて連絡をとれる可能性もありますし、遺留分などのトラブルが起きないように上手く手続きを進めてくれるはずです。
6,まとめ
今回は前妻との子供がいる人がしておかなければならない生前対策についてご紹介させていただきました。やはり遺言書の作成が必須であることは間違いありませんが、遺留分への配慮もかかせません。トラブルが発生しないように、今回の記事が何らかのお役に立てれば幸いです。
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