
目次
1,遺言の方式は民法で決められている
◆民法第960条◆
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
◆その方式とは◆
- 普通の方式(自筆証書、公正証書、秘密証書)
- 特別の方式(死亡危急時、伝染病隔離者、在船者、船舶遭難者)
遺言の方式は上記のように普通方式か特別方式によることになります。一般的には普通方式(中でも自筆証書か公正証書)によるものが圧倒的に多いです。公正証書は公証役場で公証人に作成してもらう方式なので今回のテーマからは除外しています。
いずれにしても全て「証書」で作成することが想定されています。
したがって、スマホやパソコンで作成されたものでは遺言書を作成することが出来ません。自筆証書の場合もあくまで「自筆」なのであり「代筆」は現在の法律上では認められないことになります。
2,自筆証書遺言の原則と例外
自筆証書遺言の原則は、①遺言者が②その全文、日付および氏名を③自書し、④これに印を押さなければなりません。
「自書」というのは自分で手書きするということです。なぜ自書が求められるのかというと、個人の書いた筆跡によって本人が書いたものと判定ができ、そのこと自体が遺言者本人の真意から出たものであるとされるからです。パソコンの字というのは書いた本人を特定できず偽造や変造の危険もあります。
ただし、平成30年の民法改正により、上記を原則としつつも一部例外規定が設けられました。それは遺言書に添付される財産目録については自書によらずパソコン等で作成可能になった点です。(注意点としては、目録が複数枚に渡る場合、全ページに署名、押印が必要です)
3,代筆が想定される場合
全文自筆が原則ですが、例外として財産目録を添付する場合のその目録については代筆が可能となりました。具体的な例として考えられのは、
- 高齢により多くの文字を正確に書くことが難しい場合
- 遺言書に記載する財産の種類が多岐にわたり自筆するのが大変な場合
などでしょうか。
病気等で字を書くこと自体が難しい場合は、自筆ではなく公正証書遺言を利用するとよいと思います。
4,スマホやビデオカメラによる遺言の効力
先にも触れたように現代はスマホやデジカメなどの機器が普及して音声や映像を残すことも簡単にできます。遺言者本人の意思を残しやすいという点では確かに使い勝手が良いし、ビデオメッセージとして伝わりやすいですよね。
ただ、自筆で書かれた証書と比較すると、偽造や変造がしやすいと言われていますし、法律上はあくまで「証書」で残すことが想定されていますので、法的効力としては無効ということになります。
個人的な見解としては、自筆証書遺言に加えてデジタル撮影した映像などがあれば、遺言書の効力について争いが起きた時の判断材料として、そうした記録映像も有効性を補完するものになりうるのではないかと思います。
5,まとめ
知人と話しをしている中で意外とこのテーマについて聞かれる事が多いなあと思い出し、まとめてみました。ご参考になれば幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
特定行政書士 林 宏雄