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【任意後見制度】を利用するメリットとデメリット

初稿:2021.8.5

更新:2023.12.4

認知症や知的障害などの理由で判断能力の不十分な方を支援する制度として「成年後見制度」があります。

 

成年後見制度は大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがありますが今回は「任意後見制度」についてメリットとデメリットをご紹介したいと思います。

 

目次

1. 任意後見制度ってどんな制度?

本人が契約を結ぶのに必要な判断能力がある間に、将来自分の判断能力が不十分(例えば認知症など)になったの身の回りに起きる必要な手続き(後見事務)の内容と、それを代わりに実際に行ってくれる人(任意後見人)を公正証書で決めておく制度です。

 

2. 任意後見契約の範囲・内容

任意後見契約は、

自己の生活・療養看護

及び

財産に関する事務

を受任者に委任し、その委任した事務についての代理権を受任者に与えるという契約です。(任意後見契約に関する法律第2条)

 

契約は自由に行えるのが原則ですから、委任する事務の範囲・内容は幅広く選択することができますので、委任者自らが考え、決定すべきと言えます。

 

ここで注意が必要なのは、あくまで後見事務に関する代理権を与えるのであって、おむつの交換や入浴補助、掃除といった介護労働の提供、いわゆる事実行為というものは委任事務には含まれないという点です。

 

委任する事務の代表的な範囲・内容をご紹介します。

 

1.財産の管理・保存・処分

2.金融機関との取引に関する事項、保険に関する事項

3.年金・障がい者手当などの受領に関する事項

4.不動産の売買や賃貸借等住居に関する事項

5.生活必需品の購入、家賃や水道光熱費の支払い

6.有料老人ホーム等介護福祉施設への入所契約、介護保険法の利用その他介護サービスに関する事項

7.病院等への入院契約、医療費の支払い

8.遺産分割、相続の放棄・承認

9.権利証、実印、有価証券等の保管 など

 

3. 任意後見契約を結ぶにはどうしたらよいか

本人(委任者)と相手方(受任者)で契約することになりますが、「任意後見契約に関する法律」によって、契約は公正証書でしなければならないことになっています。

 

その理由は、本人の意思がしっかりと確認されなければなりませんし、契約の内容が法律に従ったきちんとしたものである必要があるからです。

 

そのため、契約書は公証役場で公証人が作成することになっています。

 

任意後見契約が結ばれると、委任者、受任者の住所・氏名や任意後見人の代理権の範囲などが後見登記ファイルというものに登記されます。

 

(参考記事:将来の安心を支える任意後見制度について手続や流れを解説

 

4. 任意後見人はいつから働けるか=任意後見契約の効力

任意後見契約は、本人の判断能力が低下した場合に備えてあらかじめ結ばれるので、任意後見人の仕事は、本人がそのような状態になってから始まることになります。

 

具体的には、任意後見受任者や親族等が家庭裁判所に対し、本人の判断能力が低下して任意後見事務を開始する必要が生じたので、「任意後見監督人」を選任してほしい旨の申し立てをします。

 

そして家庭裁判所が、任意後見人を監督すべき「任意後見監督人」を選任すると、そのときから任意後見受任者は「任意後見人」として、契約に定められた仕事を開始できるようになります。

 

5. 任意後見監督人の仕事

任意後見契約は、上記のように家庭裁判所により任意後見監督人が選任された場合にはじめて効力が生まれる契約です。

 

その任意後見監督人はどんな仕事をするのかというと、文字通り任意後見人の事務を監督することであり、その事務に関して家庭裁判所に定期的に報告するものと定められています。

 

(参考記事:任意後見監督人の選任

 

(参考記事:任意後見監督人の解除

 

6. 任意後見制度利用のメリットとデメリット

どんな制度にしても必ずメリット、デメリットの両面がありますので、任意後見制度におけるそれぞれをご紹介します。

 

【メリット】

  • 本人の判断能力がしっかりしている元気な状態で契約することができます。
  • 自分の信頼できる人に後見人をお願いすることができます。
  • どこまでの事務を後見人にお願いするのか自由に柔軟に決めることができます。
  • 契約は公正証書で作成され登記されるので、任意後見人の地位が公的に証明されます。
  • 家庭裁判所で任意後見監督人が選任されるので、任意後見人の仕事をチェックできます。

【デメリット】

  • 本人の判断能力の低下前に契約自体はできるが、判断能力の低下後に契約の効力が生じるまで
  • 実際に任意後見人として仕事ができません。(・・・見守り契約や財産管理委任契約でカバー可)
  • 死亡後の事務は委任できません。(・・・財産管理委任契約、死後事務委任契約でカバー可)
  • 法定後見制度のような取消権同意見ありません

 

7. まとめ

将来のことを考えて元気な今のうちから出来ることをやっておくことは、とても大切なことだと思います。

 

残念ながら認知症と診断されてしまってからでは契約や預貯金の解約、財産の処分といった法律行為が大変難しくなります。

 

任意後見制度を利用することは、ご本人にとってはもちろん、ご家族や周りの方々にとっての安心につながるはずです。

 

 

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